生徒会誌『清流』の巻頭言や「学校だより(3月号)」の原稿を提出し、いよいよ卒業式の「式辞」に取りかからなければと思っていたところ、新聞で映画『シャイロックの子供たち』封切りの記事を目にした。昨年6月、本校の創校記念講演にお招きした本木克英監督の最新作だ。原作は「半沢直樹」や「下町ロケット」「陸王」などでお馴染みの池井戸潤。先週末、早速映画館に足を運んだ。

 メガバンクの小さな支店内で現金100万円が紛失するという事件が起きる。支店に勤める阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太らが調査に乗り出すが(・・後は、劇場にてご覧ください)。くせ者揃いの銀行員たちの生きざまやさまざまな葛藤を描いた作品だ。タイトルのシャイロックとは『ヴェニスの商人』に登場する強欲な金貸しのことだが、新聞記事によると、今回、本木監督は人間の弱さや脆さに焦点を当てこの映画を撮ったという。

 映画の中で登場人物たちはいろいろ悩み、もがきながら自分のとるべき道を選んでゆく。その選択が正しいのか、そうでないのか、自分ならどうするか、などいろいろ考えさせられるストーリーだった。気障(きざ)な言い方をすれば、「人生に正解などはない」といったようなメッセージが込められていたように思う。

 そう言えば、最近あらためて卒業ソングをあれこれ聴いていたところ、「正解」(作詞・曲:野田洋次郎)というRADWIMPSの曲が妙に心に刺さった。学校の先生や大人が本当に大切な問題の正解を教えてくれないのは、先生や大人自身もその答えを知らないからだ。これから大人になる皆さん自身が、人生をかけてその答え(自分の人生にとっての正解)を探してほしいという歌である。制限時間も解答用紙も採点基準も全て「あなたのこれからの人生」。焦らず、しっかり前を向いて進んでいけば、いつか答えが見つかるのかも知れない。