今月8日(火)の夜、日本全国でたくさんの人達が夜空を見上げていた。この日は「皆既月食」で月が地球の影にすっぽりと入った。しかも月食の最中に、天王星が月の裏に隠れるという「天王星食」も起こったのだ。日本で皆既月食と惑星食(天王星食)が同時に見られたのは、1580(天正8)年以来、実に442年ぶりという。1580年といえば、本能寺の変の2年前。天下統一を目指していた織田信長も世紀の天体ショーを眺めていたのだろうか。

 今思い出すと、8日の夜は郷土芸能部の夜練習を見届けての帰宅途上だった。祖山ダムの手前あたりの沿道を走っていると、月の光が何やら薄暗いのに気づき、思わず車を止めてスマホのシャッターを切った。皆既月食とは月が全く見えなくなると思っていた私は、薄赤い色(報道では「神秘的な赤銅色」との表現がなされていた)となった月に、何か不思議なものを感じ、しばし月を眺めていた。

 昔から日本では、月にはウサギがいて餅をついていると言われている。確かに月の表面の模様(黒い部分)はそう見えないこともない。「中秋の名月」にはすすきと月見団子が定番だが、観月会にはその年の豊穣を祝う意味もあるといわれている。ただし、日本以外の国や地域では、月の模様の見え方はさまざまで、モンゴルでは犬、インドではワニ、アラビアではライオン、中南米ではロバに見えるらしい。

 さらに、月の魅力は日々その姿を変えるところにもある。満月(望月・十五夜)は確かに綺麗で注目されがちだが、16日目は「十六夜(いざよい)の月」、17日目は「立待(たちまち)の月」という風情ある呼び名がある。私としては、たまに月を見上げると、2003年の映画『黄泉がえり』(主演:草彅剛・竹内結子)の主題歌『月のしずく』(歌:RUIこと柴咲コウ)を思い出してうるっとくるのだ。ちなみに、月は韓国語で「ウォル」、中国語で「ユエ」と発音し、その響きが結構心地よい。